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暗闇の登山道

 ここのところ連泊で撮影に出掛けていた。日没、朝日がテーマだったので、ポイントで撮影を終えると暗闇の登山道をヘッドランプの明かりを頼りに山小屋まで帰り、そこで一晩過ごして、また早朝に暗闇の登山道をポイントへ向けて歩くということを繰り返していた。

 屋久島の山中に熊など危険な生き物はいない。けど、人里離れた山中の、真っ暗な登山道をたった一人でヘッドランプの明かりだけを頼りに歩くというのは、まぁ、あまり気持ちの良いものではない。茂みの中でガサゴソと音がするので、照らしてみると、ヤクシカの目玉が二つ並んで青白く光っている。見慣れた光景ではあるが、その度、「ドキリ」とする。

 その一方、こうしたことを何日か続けていると、だんだんと体が夜の森の気配に慣れてくる。流れる水の音、梢を吹き抜ける風の音。カラスバトの低い鳴き声。ヤクシカの警戒音。そんなものが段々と日常になってゆく。そうしたものが何かの臨界点を超えたころ、ポコッと写真が撮れたりする。いままではそうだった。

 ところが最近、体が暗闇になかなか慣れてくれない。暗闇と体の間に乖離の層があり、その何ミリという隔たりがどうしても埋まらないのだ。そんな訳で、このごろはどうも納得のゆく風景に出合えないでいる。何が原因だろうか?と考えているのだが、答えは見えて来ない。山小屋の連泊で体も疲れたので、久々に家に帰り、家の布団で寝た。

 人里の日常に戻り、こうしてブログに向き合っているのだが、暗闇の登山道を思考の中心で反芻しながら、風景にどのように向き合ってゆこうか、その方策を探りあぐねている。なんだろうか?屋久島に住んで屋久島を撮り始めて5年目。自分の中で何か新しいことを求め始めているのかもしれない。

 メモ

 建築家 安藤忠雄を読み始めた。P51に次のように書かれていた。

 抽象的な言葉として知っていることと、
 それを実体験として知っていることでは、
 同じ知識でも、
 その深さは全く異なる。
 初の海外旅行、私は生まれて初めて、
 地平線と水平線を見た。
 地球の姿を体得する感動があった。

 心に引っ掛かったので、メモしておく。

by se-ji0038 | 2011-07-24 06:34 | 日々

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