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再会

 20年以上の時間が経過していた。僕が東京の写真事務所に勤めていた時代に知り合った写真家のM.HASUIさんがYAKUSCANの件で屋久島入りしているというのを、ブログのエントリーで知り、連絡をとってお会いすることができた。

 M.HASUIさん(いまは蓮井幹生さんのお名前で活動されている)と僕が東京で会ったのはおそらく蓮井さんが写真家の活動を始められた'87年近辺だったと思う。いまから24年も前のことになる。そのとき蓮井さんは海外の写真家の作品にも目を向けるように、と僕にアドバイスを呉れた。 Herb RittsRobert Mapplethorpeが活躍している時代で、当時お金の無かった僕は、六本木の青山ブックセンターに行っては、それらの写真集のページを飽くまで繰った(そこで何時間本を見ていても、誰から文句を言われることも無かった。良い時代だった)。

 そして蓮井さんのアドバイスは僕が歴史上の偉大な写真家たちの作品にも目を向けるキッカケになった。Ansel AdamsEdward WestonYousuf KarshAndré KertészElliott Erwitt、Alfred StieglitzEliot Porter、そしてPhilippe Halsmanなど、名前をあげ始めたらキリが無いが、そうした海外の偉大な写真家達の作品を当時随分見た。そして、機会があれば、それらのオリジナルを展示してある美術館や展示会などにも足を運んだ。いま僕の撮っている写真とは随分方向が違うが、そうした多くの偉大な写真家達の作品を見てきた経験は、いまの僕の写真人生の基礎になっている。蓮井さんはそうしたキッカケを僕にくれた、いわば恩人のような人なのだ。

 当時、蓮井さんは音楽雑誌などでミュージシャンのポートレートを撮っていた。そして新潮社の03という雑誌でレギュラーページを持つようになる。毎回かっこいい写真が掲載されたが、フェデリコ・フェリーニ監督を撮ったときの写真は圧巻だった。強い光がフェリーニを照らし、眼鏡のツルが監督の顔に強い影を刻み付けているポートレート。そのときの撮影秘話はブログに書かれている。ライカを持ってモナコGPを取材に行くという話を聞いた。長いのは90mmの単焦点だけ。それでどうやってF1GPを撮るのだろう?と思ったのだが、雑誌に掲載された写真は僕を唸らせた。

 その後いっとき、僕は写真の世界から離れてしまったが、折に触れ、蓮井さんの写真を目にする機会があった。辻仁成さんの言葉はキュークツを買ったとき、写真がカッコイイ!と思ったら、それは蓮井さんの写真だった(余談だが、愛をくださいで菅野美穂が演じた蓮井朱夏は蓮井さんの娘さんのお名前からとったと、辻氏が書いていた)。Canon20Dは僕も随分お世話になったカメラだが、そのカタログは蓮井さんの写真だった。また図解カラーマネージメント実践ルールブックの中でも蓮井さんの事務所の仕事風景が紹介されていた。

 こうして当時知り合った方が一線で活躍していることに、僕は随分刺激を受けた。蓮井さんと、平野さんの活躍は、その後、僕が写真の世界に舞い戻るキッカケになったのだと思っている。

 久しぶりにお会いした蓮井さんは、やはりカッコよかった。短い時間での再会ではあったが、多くの示唆に富むアドバイスを貰ったような気がしている。このタイミングでお会いできたことには何か意味があったようにも思う。おかげで、自分の中で少し変えてみようと思うことが出てきた。感謝である。

by se-ji0038 | 2011-11-28 23:59 | 日々

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