60年後 ライ麦畑を通り抜け?

 3日の新聞に、「■サリンジャー氏が提訴」という小さな記事が掲載されていた。要約すると、"小説「ライ麦畑でつかまえて」で知られる米小説家J.D.サリンジャー氏(90)が、同小説の続編として売り出される「60年後 ライ麦畑を通り抜け」の出版差し止めを求めて、著者や出版社を提訴した"というものだ。

 「ライ麦畑」の続編とされる「60年後 ライ麦畑を~」はJ.D.カルフォルニアの著者名で、英国で夏に、米国では秋に発売の準備をしているという。

 僕が「ライ麦畑」に初めて出会ったのは1984年、当時は高校生だった。白水Uブックスから出版された新書サイズの単行本シリーズ。ブルーとベージュのツートンの装丁でパブロ・ピカソのイラストがデザインされていた。帝京大学教授 野崎孝さんの翻訳。

 小林という友人の勧めで手にとったのだが、以来この本は何十回ページを繰ったか分からないほど読んだ。語学の方面にまったく才能の無い自分だが、この本だけは原書で読んでみたいと思い、ペーパーバックも購入した(結局最後までは読めず仕舞いだが)。

 ライ麦を皮切りに、サリンジャーものも片っ端から手にとった。そこで、同じ作家の本でも、翻訳者によって解釈が大きく異なることも知った。僕は野崎孝さんの瑞々しい文体の翻訳が好きで、出来るだけ野崎孝さんの訳本を買うようにしていた。だからか、村上春樹さんのライ麦をいまだ手にとっていない。それを読んでしまうのが怖いような気がしているのだ。

 話が大きく逸れたが、新聞記事を読んで最初に驚いたことは、サリンジャー氏がご存命だったということだ。「J.D.サリンジャー氏(90)」。既に90歳のご高齢だが、こうして消息に触れたことに、なぜだかドキドキした。僕が最初にライ麦を手にとった1980年代には世間を嫌い、既に隠遁生活に入っていた。顔写真も、あの有名なGIカット風にサッパリと切り揃えられた髪型のモノクロ写真だけしか公開されておらず、サリンジャーという作家は謎に包まれていたのだ。だから余計に作品が際立ったのかもしれない。

 ホールデンがあの後、どうなったのか?フィービーは?ストラドレーターやアクリーは? そんな気持ちが無い訳でもないが、彼らの60年後には正直興味が無い。彼らは永遠にライ麦畑で捕まえ人をやっているし、それでいいじゃないか。なぜ今になって彼らの60年後を描かなければならないんだ?

 ホールデン風に言えば、僕はまったくそんなことには興味がもてないんだな。そういうことを言ってもいいだけど、どうも気がすすまないんだ。ほんとうなんだよ。いまんとこ、そういうことには興味がないんだ。

 サリンジャー氏の提訴が勝利することを祈っています。

 
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by se-ji0038 | 2009-06-04 06:46 | 新聞から

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